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全体
良い
映像
普通
キャラクター
良い
ストーリー
良い
音楽
普通

この作品の凄さは、いわゆる異世界転生モノの枠組みを借りながら、リアルな「社会構造の変革」を描いている点にあります。
​前世の知識を使って無双するだけならよくある展開ですが、本作が決定的に異なるのは、ひとつの技術や仕組みを社会に定着させるための「泥臭いプロセス」を逃げずに描写していることです。印刷技術ひとつ導入するにしても、紙の製法からインクの開発、さらには流通網の整備や利害関係者との交渉まで必要になります。組織の中で部下を動かすための人心掌握やマネジメント論まで網羅されており、観ていて「これは現代のビジネスや組織運営にも通じる人生の教訓だな」と教えられる場面が何度もありました。
​主人公・マインのキャラクター造形も実に秀逸です。彼女の全行動の原動力は「本が読みたい」という一点のみ。この偏執的とも言える情熱が物語をぐいぐい引っ張っていきます。そして何より、チート級の知識や膨大な魔力を持ちながら、歩くことすら覚束ないほど「超・虚弱体質」という致命的なリスクを抱えているのが最高に効いています。決して万能の無敵ヒーローにしないことで物語に常に緊張感が生まれ、周囲の助けを借りざるを得ない展開が人間ドラマをより深めています。
​また、作中で描かれる本にまつわる技術革新のプロセスは、歴史の追体験としても実に刺激的です。日本や世界の出版史をなぞるように製紙法や分類法が導入されていきますが、それに対する異世界人たちのリアクションが実に生々しい。「歴史上の人々も、初めて紙や印刷技術を目にしたときはこんな風に驚き、戸惑ったのだろうか」と妙に納得させられますし、作品を観ながら歴史の奥深さに触れる喜びを味わえます。
​中でも印象的だったのが「日本十進分類法」の登場シーンです。異世界の図書分類にこのシステムを持ち込もうとしたマインが、興奮気味に「魔法はどのカテゴリに入りますか?」とフェルディナンドに詰め寄るくだりには思わず吹き出しました。周囲の冷ややかな視線も意に介さず、本のことになると周囲が見えなくなる彼女の姿に「あ、こいつ本当に筋金入りの本好きなんやな」と呆れつつも愛おしさを覚えます。
​ただの異世界ファンタジーにとどまらず、歴史の知恵と人間ドラマ、そして圧倒的な「本への愛」が詰まった見応え抜群の傑作です。



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