全く期待せずに見たが、とても良い雰囲気の作品だった。
全体としては、ほのぼのシュールギャグを基調とした完全な日常系なので、これといって大きな展開があるわけではないのだが、とても惹き込まれる部分があった。
穏やかな日常の中にあるささやかな喜びや悲しみといったものが自然に表れていて、良い意味で主流の深夜アニメとは異なるタイプの作品だったなと。「君」や友達との楽しく笑いのある生活と、時折差し込まれるやや物憂げなエピソードによって生まれるコントラストが、この作品特有の雰囲気を生み出しているような気がした。
全体的に優しい世界観も魅力の一つ。
結構マイペースで絡みづらいであろう主人公に対して、高校時代からずっと仲良くしてくれている友達。とても良い。
最終話で、エンディングの後に「エピソード0」を持ってきて、「雨と君と」というタイトルに相応しい締めくくり方をしたのも素晴らしかった。
原作も気になった作品。
●全てに言語化と理由を求めない。
第9話で子供が藤にどんな小説を書いているのか尋ねるシーンがある。
結局、藤がどんな小説を書いているかは明かされないし、「なぜ明かさなかったのか」という理由もぼかされているが、これこそこの作品「らしさ」が出ている部分。
「全てを言語化する必要はない」「全てを説明する必要はない」というような主張を言外に含んでいるようで、言語化という行為が過度に賞賛されがちな現代社会にとってのアンチテーゼにも似たようなものを感じた。
「小説家」という言葉を扱う職業であるはずの藤が、敢えて言葉を尽くさないという反転現象が起きているのも興味深い。