非常に評価が難しい作品。宝塚がモデルの歌劇学校を舞台にした、4世代ほどに渡る群像劇を描いている。まずこの作品には明確な欠点がある。登場人物が多すぎること、時代が過去と未来で頻繁に行き来し、登場人物の姿も名前(結婚や芸名)も変わること、キャラクターデザインがシンプルで、区別のつかない人物が多いこと…から、映像だけ見ていても誰が誰だかわからない時間がかなり長い。時代を超えて人物が相互に関わり合い、過去を振り返り、時には関係が変化する様を描く作品であるが故に、登場人物が誰であるか認識することは非常に重要なのだが…本当に判別が難しく、誰かを思い出そうとしている、もしくは既に登場した誰かなのかと疑っている間は物語に集中できない。公式サイトには相関図があるのだが、これを見ないとスムーズに物語に没入できないというのは映像作品として問題があると思う。
相関図で状況を把握しながら見たとして…エピソードの中心となる人物はかなり多く、印象的なエピソードもあるものの、あっさりとした描写で終わる人物・エピソードもかなり多い。淡島という舞台を描く作品として成立はしているものの、全体としてはやや散漫な印象が残る。
とはいえ、単にばらばらに人物を描いて終わるのではなく、序盤に登場して印象的だった伊吹桂子と岡部絵美が、中盤での脇役的描写を経て終盤で再度フォーカスされたことで、この2人とそれを取り巻く人物たちの関係と物語が淡島百景全体を貫き、その印象を大きく左右する形となった。これが良い形で終わっていれば非常に高く評価したと思うのだが…結果としては、淡島卒業生が伊吹桂子の依頼でいじめがあったことを書籍として世間に公表し、それがニュースとして爆発的に広まり、淡島自体が批判にさらされ、その中で伊吹桂子と岡部絵美に残された知人や家族たちが苦慮しながら前を向く、という形で幕を閉じることになった。これまで一貫して淡島に関わる人物たちの個人的な思い、振る舞い、触れ合い、関係を描いてきたものとはかなり異なる形であり、原作が終盤に向かうころ、現実で起きた宝塚の劇団員の自殺と、それを取り巻く世間の反応に強く影響されたと推察される。原作者の責任感として世間の批判に対して一定の答えをだそうとしたのは汲み取れるし、作品として成立してはいるのだが、長く描いてきたものが終盤で変質しているように感じられる。
個人的にも私が見たかったものではなかったのは残念。