サービス開始日: 2023-06-02 (1223日目)
序盤からヒロインである栗田の振り回されっぷりが凄まじく、彼女の不憫な姿に可哀想だなと思わされつつも、同時にその健気な愛らしさが際立っています。
対する山岡の容赦ないデリカシーのなさは、一周まわって笑ってしまいます。しかし、そんな破天荒な変人に会社の命運を握る一大プロジェクトを任せてしまう大原社長の度胸と胆力も只者ではありません。それだけ「究極のメニュー」という途方もない構想に対する情熱と好奇心が強いことの裏返しとも言えるでしょう。
また、劇中で語られる「人間の手で強制的に作られたフォアグラよりも、自然の恵みである鮟肝(あんきも)の方が美味い」というアプローチにはハッとさせられます。一般的には高級食材の代名詞であるフォアグラに目が行きがちですが、食の本質や自然由来の味覚の凄みにスポットを当てる語り口は非常に刺激的です。
キャラクター同士の歪な噛み合いと、食に対する確固たる美学が炸裂しており、シリーズの幕開けとして申し分ない面白さを放っています。
第9話の過激な叱責やCTスキャンといった尖りきった言動を思うと、第129話における山岡士郎の変貌ぶりには驚かされます。あまりの角の取れようと呆けたようなコミカルさに「お前誰や!?」と思わず笑ってしまいました。
しかし、その見た目や態度の軟化とは裏腹に、作品の核である「食に偏見や無理解を抱く者に対し、料理そのものの真価でその目を覚まさせる」という構造はびくともしていません。傲慢な姿勢を叩き潰すのではなく、温かみのあるアプローチで相手の価値観を解きほぐしていくスタイルは、初期の鋭利な毒気が抜けたからこそ表現できる味わいです。
山岡のキャラクター性が親しみやすく変化しても、食を通じて人間関係や考え方を整えていく世界観がブレないからこそ、観ていて心地よい納得感が残ります。作品の持つ本質的な魅力を再確認できる一幕でした。
第9話は、作品のバックボーンと今後の目指すべき頂点が一度に明かされる、まさに情報密度が凝縮された回でした。
これまで物語を包んでいた優しさの裏には、ひまわりサーカス団長・マリアが抱える過酷な事故の過去と脳下垂体損傷という身体的代償があった事実に胸を締め付けられます。しかし、だからこそ「笑顔を失った子を救う」というひまわりサーカスの設立理念に説得力が宿り、ブラック・ロータスから受け継いだ意志の重みがダイレクトに伝わってきました。
また、皇グループによる買収危機という窮地に対し、受け身にならず「世界最大の大会で優勝して賞金で解決する」と一丸になる団員たちの意気込みも熱いです。そして何より、その命運を託す新団長として瑞香が指名される展開となりました。
過去の救済から未来の証明へ。個人や団のドラマが見事に噛み合い、クライマックスに向けた決意と熱量が最高潮に高まる、実に見事な構成でした。
手打ちそば屋が警部と交わした約束の日に「この野郎、窃盗犯だ!おめぇ大木屋の味を盗みやがったな!」という警部の台詞とともに、手打ちそば屋が味を「盗む(パクる)」ことに成功し、同時に営業許可証も「盗む(貰う)」というオチ・構成も素晴らしい。